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あれっ?LET IT BE 50周年デラックス・エディションの発売は?
と思っていたファンにとって、51周年でようやくの『LET IT BE』スペシャル・エディションが発売となりました。
コロナ禍もあって、50周年ではなく51年目となったんですね。
そしてスーパー・デラックス盤の方で、とうとう幻のアルバム『Get Back』(グリン・ジョンズ編集)が公式に陽の目を見ることになりました。
だがビートルズファンなら「?」も隠せない、この『LET IT BE』スペシャル・エディション。
音楽数珠つなぎ特別編。
どこが聴きどころで、何がダメなのか、改めて51年目に『LET IT BE』レビューしていきます。
ビートルズはなぜ最後に『LET IT BE』発表したのか?
ビートルズのLET IT BE』は、オリジナルアルバムとしてはラストに発売され、当然のように全米・全英No.1となっています。
ですが、実は製作は先に発表された『Abbey Road』(アビー・ロード)であり、『LET IT BE』はビートルズの数あるアルバムの中でも異色の扱いとなりました。
- アルバム(およびプロジェクト)の原題は『GET BACK』(ゲットバック)である。
- プロデューサーであるジョージ・マーティンの手によらない最初で最後の公式アルバムである。
- ウォールオブサウンドで有名なフィル・スペクターがプロデュースした唯一のビートルズのアルバムである。
- アルバムの製作は『Abbey Road』(アビー・ロード)よりも前である。
なぜ『Abbey Road』(アビー・ロード)より後になって発表されたのでしょうか?
以下、順番に紐解いていきましょう。
アルバムの原題は『Get Back』
アルバム『LET IT BE』は、もともとは『Get Back』(ゲット・バック)というタイトルの予定でした。
以下のようにデビューアルバム『Please Please Me』と同じ構図で、アルバムカバーまで作られていました。
というのも、スタジオセッションをすべて撮影して、新アルバムおよびドキュメンタリーの発表、そしてライヴを行おうという『Get Backプロジェクト』が始まりだったのです。
このプロジェクトは、原則オーバーダビングせずに、バンドの演奏のみで楽曲を収録する、つまり『バンドの原点に返ろう』という意味で「ゲットバック」セッションと名付けられていました。
しかし、マネージャーであるブライアン・エプスタインを亡くし、何とか自分たちで活動してきたザ・ビートルズも、個々のモチベーションの違いなどは「ホワイトアルバム」あたりでほぼ限界を迎えていました。
メンバー間での軋轢もある中で、四六時中演奏の撮影が行われるというストレスもあり、集中力を欠いた演奏が多いゲットバック・セッションが、だらだらと行われました。
そんな散漫なセッション音源をビートルズのメンバーが気に入るはずもなく、グリン・ジョンズが何とか苦心して編集したアルバム『GET BACK』は2回もメンバーから却下され、なんと2021年までお蔵入りされます。
そこで、雰囲気の悪いトゥイッケナムスタジオからアップルスタジオに移り、ジョージの助言でオルガン奏者のビリー・プレストンが加わってからは、ビートルズの演奏の質がいつものように格段に向上していき、それなりのテイクが録音されることとなりました。
このあたりは、映画『GET BACK』を見れば、かなり興味深く知ることができます。
ちょいとお値段は高いのですが、ビートルズの最後のライヴとも言える「ルーフトップ・コンサート」も高音質でフル収録されており、内容は大満足です。
旧映画作品『LET IT BE』もリマスターして販売してほしいのですがね。。。。
もともとは「ディズニープラス」独占配信の映画でした。
プロデューサーであるジョージ・マーティンの手によらない最初で最後のアルバム
結局、アルバム『Get Back』は放棄されたまま、しっかりしたプロデュースの下、もう一度自分たちのクオリティを取り戻したいビートルズのメンバーたちは、実質的なラスト・アルバムとなる『Abbey Road』(アビー・ロード)を「もう一度、一緒にやってくれないか?」と、ジョージ・マーティンにプロデュース依頼することとなりました。
一方放置された「ゲット・バックセッション」音源は、有名プロデューサーフィル・スペクターに託されることになりました。
そしてフィル・スペクターお得意の化粧をほどこし完成したのが『LET IT BE』(レット・イット・ビー)という名のアルバムとなって発表された、というわけです。
発売は『Abbey Road』(アビー・ロード)という大傑作が発表(1969年9月26日)された後、ビートルズが事実上解散してから約1ヶ月後の1970年5月8日でした。
従って、ジョージ・マーティンがプロデュースしていない唯一のビートルズの公式アルバムとなったわけです。
とはいえ、グリン・ジョンズと一緒にジョージ・マーティンもスタジオに何度も顔を出しており、ビートルズのメンバーとはそれなりにうまくやっている様子が映画『GET BACK』では散見され、それなりの貢献をしたと思われます。
このあたりのドラマもザ・ビートルズマニアなら詳しいであろうエピソードですね。
フィル・スペクターがプロデュースした唯一のビートルズのアルバム
ビートルズを知り尽くした【5人目のビートルズ】ジョージ・マーティンの手によらない事もあり、アルバム『LET IT BE』収録曲は、ビートルズの(特にポールの)あずかり知らないところで、アレンジやオーバーダビングが施されることとなりました。
実質的には「ホワイト・アルバム」の時にもジョージ・マーティンは締め出され、ほぼセルフ・プロデュースに近い形の曲も多いようだったようですが。。。
一般的には、散漫な出来の音源をそれなりに聴けるようにまとめたフィル・スペクターの貢献を称賛する声も聞かれますが、メンバー間にはそれぞれ思いがあったようで、特にポールは気に入っていないようでした。
「The Long And Winding Road」(ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード)の過剰に装飾されたオーケストラアレンジにポールが激怒、というのは有名なエピソード。
そしてそれを裏付けるように、ビートルズのメンバーは解散後に、過剰なアレンジやオーバーダビングを排した『LET IT BE…Naked』(レット・イット・ビー・ネイキッド)というアルバムを発表しています。なお、故ジョン・レノンは関わっていません。
一方で、散漫な音源をまとめあげたフィル・スペクターの手腕を、ジョン・レノンとジョージ・ハリスンは高く評価し、その後自身のアルバムにもプロデューサーとして迎え入れています。
その最も顕著な成果として、ジョージの大作『All Things Must Pass』(オール・シングス・マスト・パス)があります。
アルバムの製作は『Abbey Road』(アビー・ロード)よりも前
こういった経緯もあり、アルバム『LET IT BE』(レット・イット・ビー)発表は、録音された順とは逆に 『Abbey Road』(アビー・ロード) より後となり、ビートルズが最後に発表・発売したアルバムとなりました。
なおビートルズが事実上解散を発表したのが、1970年4月10日。
『LET IT BE』の発売は、解散表明後の1970年5月8日であり、ドキュメンタリー映画と合わせて、アルバム『LET IT BE』はビートルズ解散を象徴する作品となってしまいました。
非常に完成度の高い『Abbey Road』(アビー・ロード)の後に発売となったことで、デモテープ的な音源もある『LET IT BE』に困惑した人もいたようです。
アルバム『LET IT BE』ってどうなの?
で、結局『LET IT BE』(レット・イット・ビー)というアルバムは良いのか?悪いのか?
ファンなら賛否両論あるだろうが、今ではそれなりのクオリティを持ったアルバムと認識されています。
「Get Back」「Let It Be」「Don’t Let Me Down」「The Long And Winding Road」「For You Blue」「Across The Universe」など非常に聴きごたえのある曲が並び、やはり名盤とされているのがビートルズの凄すぎるところです。
でもビートルズ初心者が最初に聴くべきアルバムではないとは思います。
こういった歴史を知って聴く方が、よりこのアルバム『LET IT BE』を味わい深くしてくれるでしょう。
僕はポールが言うように「The Long And Winding Road」のオーケストラは過剰だし、ビートルズには似合わないと思う一人です。
僕個人としては、お蔵入りになったグリン・ジョンズ版『Get Back』の方が、よりロック色があって好き。
『LET IT BE』スペシャル・エディション(スーパー・デラックス)の良いところ悪いところ
さて、アルバム発表から51年を経て発売される『LET IT BE』SPECIAL EDITIONはいったいどう評価すべきなのか?
まずアビー・ロードの時には「デラックス・エディション」となっていたのが、今回「スペシャル・エディション」となっているのはなぜ??
スペシャル・エディションのデラックスとかスーパー・デラックスというややこしいネーミングw。
さて、「スペシャル・エディション(スーパー・デラックス)」と称される最も充実した盤は5CD+ブルーレイ1枚の合計6枚組の豪華仕様。
1CD、2CD、5CD+1BD、LPなど多様な仕様で販売されますが、僕としては幻のアルバム『Get Back』(グリン・ジョンズ編集版)が付属する「スペシャル・エディション(スーパー・デラックス)」がやはり絶対外せないです。
『LET IT BE』スペシャル・エディション(スーパー・デラックス)良いところ
CDの方には、オリジナル『LET IT BE』の最新ミックスはもちろん、アウトテイクが満載です。
そしてファンには嬉しいのが、スーパーデラックスにおいて、幻の未発表アルバム『Get Back』が収録されることです。
収録内容からして、グリン・ジョンズが1969年にミックスした、いわゆる「1st Mix」になりますが、これらがようやく公式な音源として聴くことができるようになったのです!
セカンドミックスの『Get Back』収録の「I ME MINE」と「Across The Universe」は「スーパー・デラックス」ディスク5(CD5)に、『レット・イット・ビーEP』として収録されています。
この未発表アルバム『Get Back』のフル収録が、スペシャル・エディション(スーパー・デラックス)の最大の魅力と言えます。
海賊盤に比べ音質は格段にアップしており、ファンならこれだけで「買い」です!
コアなファンなら、『Get Back』はすでに海賊盤で所有している、という人も多いかもしれませんが、音質は公式盤がベストの出来!!
幻の未発表アルバム『Get Back』が高音質フル収録 !!
未発表のアルバム『Get Back』について
アルバム『Get Back』では、フィル・スペクターのオーケストラアレンジが無く、グリン・ジョンズが編集したより素に近いアレンジ・エディットの各曲を聴くことができます。
実際シングル「Get Back」は、グリン・ジョンズ編集のものが【最もノリが良くスピード感あふれる】編集で、ライヴ感満載な出来なので、正直個人的には、アルバム『Get Back』バージョンが圧倒的に素晴らしいと感じます。
「The Long And Winding Road」 も『アンソロジー3』に収録されていたものより高音質で、ポールの臨んだメランコリックな響き。これこそビートルズの演奏の決定版でしょう!
「Let It Be」は、ジョンとジョージの美しいバックコーラスが素のまま聴けますし、リンゴのドラミングも実に自然です。
「For You Blue」はアルバム『LET IT BE』収録のものも素晴らしいですが、『Get Back』の段々と盛り上がっていくテイクの方が、曲が徐々に盛り上がっていく構成に高揚感を覚えますね!
グリン・ジョンズはちゃんとベストなテイクを編集していたのだ、ということがよくわかります。
映画『GET BACK』をご覧になった方はわかると思いますが、グリン・ジョンズがビートルズと一緒に、かなり音にこだわって作っているのがわかりますよ。
確かにもうちょっと曲数を省けばよかったのに、とか、「Two Of Us」など、アルバム『LET IT BE』収録テイクの方が良いデキの曲もあるにはありますが。
「One After 909」は、公式アルバムと同じテイク(ルーフトップ・コンサートのテイク)ですが、ジョンとポールのボーカルが左右に振られ、聞こえ方が全く違います。そういった楽しみもありますね。
ボツになったアルバムでしょ?
なんて安易に考えて聞かないなら、ヒジョーに勿体ないと思います。
個人的には、公式アルバム『LET IT BE』より『Get Back』の方が聴きごたえがあると感じますし、同じ曲なら僕は『Get Back』収録版の方が好きな曲が多いですね。「Two Of Us」だけは『LET IT BE』バージョンの方がいいかな。
あと、オーディオ環境が整っている人にとっては、ブルーレイオーディオのハイレゾ音源や、5.1チャンネルサラウンド収録の『ブルーレイオーディオ』も楽しみの一つとなりますね。
『LET IT BE』スペシャル・エディション(スーパー・デラックス)ダメなところ
逆に悪い所は、やっぱりと言うべきか、値段が高いところです。
だったら、ボーナストラックは満載かと思いきや・・・「?」な部分も多いです。
厳選された素晴らしいボツテイクが満載ではあるのですが、ファンからすれば膨大なゲットバック・セッションやアップルスタジオでのテイクの中から、「なんであのテイクが収録されていないの?」ということです。
例えばセッション中、過去のビートルズナンバーや、ジョン・ポール・ジョージそれぞれ後のソロ作品で発表となる曲の初期バージョン(あるいはビートルズバージョンと呼ぶべきもの)が何曲か演奏されているのに、あまり収録されていません。
この値段なのだから、このあたりはメドレー形式でもいいので、多数収録されるとファンとしては嬉しかったです。
「Love Me Do」も演奏しているのに、なぜか断片的な「Please Please Me」は収録・・・とか。(「Let It Be」の演奏前にポールが少し弾き語りしただけなので、ついでの収録と思われるが・・・。)
ジョンの「Gimme Some Truth」は収録されているのに、「Child Of Nature」(Jealous Guyの原曲)は未収録とか。
ポールの「Another Day」「Back Seat Of My Car」、ジョージの「Let It Down」は断片的でも収録してほしかったですね。
それなりに聴ける音源としては、ポールが歌う「Twenty Flight Rock」「Besame Mucho」や「Get Back」の様々なバージョン(テンポが早いバージョン、ジョンがリードヴォーカルのバージョン、「No Pakistanis」バージョン、ドイツ語バージョン)あたりも収録があれば文句なしでした。
公式にはポールがリードヴォーカルの曲をジョンが歌うロックな「I’ve Got A Feeling」、スワンプっぽく演奏される「Rock And Roll Music」、ジョージがボーカルを分ける「Not Fade Away」等もあったハズ。
まぁ膨大なセッションのなかで、今回収録されている音源が抜きんでて聴けるレベルなのかもしれないし(通称ナグラ・リールと呼ばれるテープには邪魔なビープ音が多いし)、ほとんどが冗長で退屈な音源とされているので、ある程度仕方ない部分もあるんですが。。。
それと旧映画作品である『LET IT BE』も久しく廃盤のまま、今回も陽の目を見ることはなかったのが残念!
ビートルズ最後のライヴである通称「ルーフトップ・コンサート」(アップルスタジオの屋上でのライヴ)の音源もボーナスディスクにしても良かったんじゃない??
「ルーフトップ」音源は期待していたファンが多かっただけに残念!
- 「ルーフトップ」に関しては、その後リミックス音源がデジタル配信のみで販売されました。
『GET BACK』ブルーレイ(DVD)の値段がかなり高いですので、所有はせずとも見てみたい!という方はディズニープラスで実質無料で見ることもできますので、よければ以下の記事も参考になさってください。
後追い世代が、公式な映像作品である旧映画『LET IT BE』を見られるように、今後ぜひとも発表を待ちたいです。
映像作品としての旧映画『LET IT BE』や、ルーフトップでのライヴ全編のリマスターは収録されず。
まとめ
『LET IT BE』の新しいスペシャル・エディション発売は、まずはファンとして喜ぶできことです。
個人的には幻となったアルバム『Get Back』が素晴らしいので、値段は高いですが、スペシャル・エディション(スーパー・デラックス)を聴いてほしいなと思います。
先述のとおり、期待どおりの部分と期待外れの部分、両方ありますが、やはりファンにとっては嬉しいスペシャルでスーパーでデラックスなエディションになことは間違いありません。
また本作は映画と書籍にて相互に補完しあう作品とのことなので、より深くこの時期のザ・ビートルズを知りたいファンは、映画『GET BACK』3部作はもちろん、すぐ絶版になりそうな書籍『GET BACK』もチェックしておきたいところですね。
ジョン・ジョージというメンバー2人がすでに故人となり、解散もしているバンドがここまで世界中で愛されているという事実。
偉大なバンド「ザ・ビートルズ」に敬意を表しながら、じっくり『LET IT BE』スペシャル・エディション(スーパー・デラックス)を堪能してほしいと思います。
まだビートルズをよく知らない、という方は、「有名だから」という理由で最後のアルバムである『LET IT BE』ではなく、まずはオリジナルアルバムを発表順に聴いていくことをおすすめします。
ザ・ビートルズの歴史、成長を、聴きながら「耳でも知る。」
その方が間違いなく、今作『LET IT BE』をさらに深く味わうことができるからです。
そしてファンとしては、出し惜しみせず、
早くリマスターされた旧映画『LET IT BE』も出してください!
と言いたい。
今後もワクワク期待しながら、ビートルズ関連作品が発表されることを心から待ちたいと思います。
いまだに新作品が発売されるたびにウキウキ・ワクワクできるバンド「ザ・ビートルズ」。
より良い音楽を知るためにも、出発点となるビートルズの作品で、忙しい毎日に少しでも「ゆとり」を持って楽しんでほしいです。