良質なパワーポップを聴きたい!
そんな方に、エリック・カルメン繋がりで「ラズベリーズ(The Raspberries)」はどうでしょう?
70年代初頭、ロックンロールが複雑化し、プログレッシブやハードロックが全盛を迎える中、シンプルで爽快なメロディとキャッチーなフックを武器に登場したのが、クリーブランド出身のバンド「ラズベリーズ」です。
彼らの音楽は後に「パワーポップ」と呼ばれるジャンルの礎を築き、現在に至るまで多くのミュージシャンに影響を与え続けています。
今回は、そんなラズベリーズの名盤とその魅力を掘り下げていきましょう。
忙しくてなかなかゆっくり音楽を聴く時間がない方も多いと思いますので、エバーグリーンな音楽だけをお伝えするように心がけています。
パワーポップの先駆者としてのラズベリーズ
ラズベリーズは1970年、エリック・カーメン(ボーカル・リズムギター)を中心に、ウォーリー・ブライソン(リードギター)、ジム・ボンファンティ(ドラムス)、デイヴ・スマーリー(ベース)の4人で結成されました。
彼らの音楽性は60年代のビートルズやフー、キンクスなどのブリティッシュ・インヴェイジョンバンドから強い影響を受けながらも、よりパワフルでエネルギッシュな演奏スタイルを特徴とし、時にはザ・ビーチボーイズのような美しいハーモニーも用いていました。
当時のロック界では長大な組曲や技巧的な演奏が主流となりつつありましたが、ラズベリーズはあえて3分程度のコンパクトな楽曲の中に、キャッチーなメロディ、ハーモニー、そしてロックのエネルギーを凝縮させるというアプローチを選びました。
この「短くても強烈なインパクトを残す」というスタイルが、後のパワーポップの基本となり、現在では元祖パワーポップバンドの一つと認識されています。
伝説の名盤『ラズベリーズ』(1972年)
1972年にリリースされたデビューアルバム『ラズベリーズ』は、パワーポップの金字塔として今なお語り継がれています。

冒頭を飾る「Go All The Way」は彼らの代表曲となり、アメリカでビルボードチャート5位という大ヒットを記録しました。
この曲の特徴は何といっても、一度聴いたら忘れられないフック満載のメロディと、甘く切ない恋心を描いた歌詞のコントラストです。
エリック・カルメンの伸びやかなファルセットとバンドの堅実な演奏が生み出す爽快感は、半世紀近く経った今でも色あせることがありません。
アルバムには他にも「Come Around And See Me」「I Saw The Light」「Waiting」など、ギターとヴォーカルハーモニーが絶妙に絡み合う楽曲が収録されており、パワーポップというジャンルの基盤を作り上げました。
僕が特に聴いてほしいのがラストを飾る「I Can Remember」です。
非常に壮大な組曲で、ポール・マッカートニーを思わせる超名曲なんですが、ベスト盤には入っていないんです。
なのでラズベリーズはベスト盤より、彼らの残した数少ない4枚のアルバムを全部紹介していきます。
完成度の高い2ndアルバム『フレッシュ』(1972年)
デビューからわずか数ヶ月後にリリースされた2ndアルバム『フレッシュ』は、さらにバンドの音楽性が洗練された作品です。

「I Wanna Be With You」は前作「Go All The Way」に匹敵する名曲で、エリック・カルメンの感情豊かなヴォーカルとブライソンのギターワークが絶妙に絡み合う名曲。
このアルバムではよりポップ志向が強まり、メロディアスな曲調が前面に出ていますが、それでいてロックの迫力は失われていません!
「Let’s Pretend」のような叙情的なバラードから「Nobody Knows」のようなアップテンポな楽曲まで、バラエティに富んだ内容となっています。
やはりエリック・カルメンが作曲した曲が群を抜いて良く、「Drivin’ Around」は、ビーチボーイズの影響を感じさせる爽やかなポップに仕上がっています。
ラズベリーズは、ビートルズはもちろんビーチボーイズが好きな方にもオススメできるバンドですね。

集大成としての『サイド3』(1973年)
3rdアルバム『サイド3』は、バンドの音楽的野心がより前面に出た作品です。

特にアルバムのハイライトとなっている「Overnight Sensation (Hit Record)」は、レコード業界の裏側を皮肉を込めて描いた楽曲であり、メンバーの複雑な心境が垣間見える傑作です。
エリック・カルメンのベストアルバムにも収録されるほど、曲の出来は素晴らしいです。
「Tonight」なんかもエリックらしさが出ているパワーポップで、良い出来ですよ。
また「Ecstasy」や「I’m A Rocker」といった楽曲では、より複雑なアレンジやプロダクションが施されており、彼らの音楽的成熟を感じさせます。
しかし根底にあるのは依然として、強烈なメロディとキャッチーなリフレインというパワーポップの真髄です。
終幕を飾る『スターティング・オーバー』(1974年)
ラズベリーズの最後のアルバムとなった『スターティング・オーバー(素晴らしき再出発)』は、バンドの音楽性の集大成とも言える作品です。

この頃にはスコット・マッケャリーがベーシストとして加入し、サウンドに新たな要素をもたらしました。
タイトル曲「スターティング・オーバー(Starting Over)」は、その名の通り新たな出発を感じさせる素晴らしい楽曲となっていますが、皮肉にもバンドはこのアルバムをもって解散することになります。
「スターティング・オーバー(Starting Over)」と言えば、ジョン・レノンの曲が有名ですが、ラズベリーズも負けていません。
ちなみにジョン・レノンはラズベリーズが好きだったようで、ラズベリーズのTシャツを着ている写真が残されています。
また「プレイ・オン」や「ミッドナイト・ムーヴァー」といった楽曲では、バンドの音楽的成熟がより顕著に表れ、ハード過ぎず、かといって軟弱すぎないという絶妙なバランスが取れています。
特筆すべきは「オン・ザ・ビーチ」という楽曲で、これはビーチ・ボーイズへのオマージュとも取れるサーフミュージック風の曲調ながら、ラズベリーズならではの切なさとパワーを兼ね備えています。
そして「オーバーナイト・センセーション(Over Night Sensetion)」もポール・マッカートニーばりに絶品な名曲です!
当時の商業的成功には恵まれなかったものの、後のパワーポップバンドに多大な影響を与えた重要な作品として再評価されています。
後世への影響
ラズベリーズの活動期間は短く、1975年に解散してしまいますが、彼らが残した音楽的遺産は計り知れません。
チープ・トリック、ビッグ・スター、ニック・ロウ、そして80年代以降のウィーザーやフォントーン・キュアスなど、数多くのバンドが彼らの影響を公言しています。
特に90年代以降のオルタナティブロックやインディーポップのシーンでは、ラズベリーズ再評価の動きが顕著となり、若い世代のミュージシャンたちが彼らの楽曲をカバーしたり、彼らの音楽性を取り入れたりする例が増えています。
エリック・カルメンのソロキャリア
ラズベリーズ解散後、中心人物だったエリック・カルメンはソロキャリアに転身し、「All By Myself」や「Hungry Eyes」(映画「ダーティ・ダンシング」サウンドトラック)などのヒット曲を生み出しました。
彼のソロ作品はラズベリーズ時代よりもAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)寄りのサウンドですが、メロディの美しさという点では一貫しています。
詳しくは別記事で書いていますので、良かったら見てくださいね。

今こそ聴きたいラズベリーズ
現代の音楽シーンにおいて、テクノロジーの発展によって音楽制作の敷居は下がりましたが、単純明快かつ強烈なインパクトを持つメロディを作り出す才能は、時代を超えて価値あるものです。
その意味で、ラズベリーズの音楽は決して古びた過去の遺物ではなく、今なお新鮮な驚きと感動を与えてくれます。
Spotifyなどの音楽ストリーミングサービスでは彼らの全アルバムが配信されており、高音質で当時の輝きを体験することができます。
ただ良い音楽は、個人的にはCDという実物で持っておくのが一番と思っています。
いつストリーミングから無くなるかわかりませんし、ジャケット等も作品の一部と言えますからね。
ということで、パワーポップというジャンルに興味を持ったなら、まずはラズベリーズの名盤からその旅を始めてみてはいかがでしょうか?
彼らの音楽は、複雑化する現代社会において、シンプルかつストレートな喜びを日々に与えてくれるはずですよ!