ども、エバーグリーンな音楽研究家ゆとらです。
音楽数珠つなぎ、今日は「ブライアン・ウィルソン」。
ビーチボーイズの音楽の要であり、現役のミュージシャンでもあるブライアンのソロ活動に焦点を当てていく。
これがまた素晴らしい作品ばかりで驚くのだ。
ブライアン・ウィルソンのソロ活動
ブライアン・ウィルソンはビーチボーイズのメンバー。
ビートルズとのライバル対決や未発表アルバム「スマイル」の頓挫、ドラッグなどにより精神に破綻をきたし、徐々にビーチボーイズの活動から身を引いていく。
幾度か復活と隠居を繰り返し、1988年に待望のソロ活動を開始し、半分復活することとなる。
その後も紆余曲折あるものの、気づいてみればソロ作品を多数発表しており、そのどれもが質の高いアルバムなのは驚くべきことだ。
ちなみに、ビーチボーイズの傑作アルバムは、ほぼブライアン・ウィルソンの手によるものだ、とこの際断言してしまおう。
「ペット・サウンズ」はもちろん、「トゥデイ」や「シャット・ダウンvol.2」など初期作品もだ。
そしてブライアンの類まれなるポップセンスが発揮されるのは、ビーチボーイズの作品だけではない。
他アーティストへのプロデュース作品もそうだし、ソロ作品においても存分に楽しめるものだ。
コアなファンならブライアンのソロ作品も聴いていると思うが、まだこれから、という方のために、ソロ作品の聴きどころを今日は紹介したい。
ブライアンのソロ作品は名盤揃い!駄作なし!
ファンの偏見もあろうが、言ってしまうと、ブライアンのソロ作品に駄作はない。
アルバムの質が正直言って半端なく、未だに現役ミュージシャンの中でもトップクラスと言えると思う。
特にポップな楽曲においては、まだ彼の右に出るものは現れていないんじゃないかってくらい。
よって、ブライアンは生きてはいるが、すでにレジェンドであり、多数のミュージシャンから尊敬されている。
が、ビーチボーイズ時代のブライアンの「声」を期待してソロ作品を聴くとズッコケることになる。
「声」に関しては、ドラッグの影響もあったと思われるが、少ししゃがれた声になっていて、その分、ビーチボーイズでマイク・ラヴが担っていた低音がブライアンの方で出るようにはなっている(笑)。
それはそれで魅力的ではあるが、ビーチボーイズファンの人は、あの透き通ったブライアンの声とは全く違うので、そこは覚悟して聴く必要がある。
ブライアン・ウィルソンのソロアルバムは、10作品以上出ている。(ベスト盤やライヴ盤除く)
結構出ているな、という感じだが、驚異的なのはそのアルバムのレベルだ。全てと言っていいほど捨てアルバムは無い。
おすすめのアルバムは全部!?
できれば全て聴いていただきたいが、中でも絶対に聴いてほしいアルバムを紹介しておくと、まずはファーストアルバム『Brian Wilson』。
Brian Wilson(1988年)
ビーチボーイズ本体が、映画カクテル挿入歌「ココモ」で、久々の全米No.1ヒットを飛ばすなか、本体には大きく関与せず、ソロ作品として発表されたのが『Brian Wilson』だ。
後に発売されたデラックス・エディションが、リマスターされボーナストラックも入ってお得だが、すでにCDというメディア自体がストリーミングに押されている現在、廃盤に等しい扱いだ。
中古や輸入盤でもいいので、見つかれば手に入れておくべしだ。
1曲目の「Love And Marcy」は、今もライヴでよく披露される名曲。
後のアルバムに2回も新録され収録されるぐらい、本人も気に入っているようだ。
ブライアンらしい美メロ満載の曲で、この曲を聴いた瞬間、
あ、このアルバム買って正解
と思わされるだろう。
3曲目「Melt Away」も、同様の流れを汲んだブライアンらしい佳曲。
その他もそれぞれに聴きどころがあるが、9曲目「Let It Shine」はビーチボーイズを思わせるハーモニーが美しい曲で思わずニンマリ。
そしてアルバム最後に収録の「Rio Grande」は、ビーチボーイズの「ペットサウンズ」~「スマイル」期を思わせる雰囲気の曲で、異なる曲調をうまく組み合わせた曲の展開が実に秀逸。
ファンなら「なるほど!」というビーチボーイズ的展開が、特に気に入るのではないかと思う。
デラックス・エディション(海外ではエクステンデッドヴァージョン)ならボーナストラックもキラキラ感あふれる「He Couldn’t Get His Poor Old Body To Move」や、いかにもブライアンらしい「Being With The One You Love」、映画「ポリスアカデミー4」挿入歌でシングルカットもされた「Let’s Go To Heaven In My Car」などボーナストラックとしては贅沢すぎる楽曲がたくさん。
絶対デラックス・エディションをゲットするべきだ。
Imagination(1998年)
続いては、実質的なセカンドアルバムと言っていい「Imagination」(イマジネーション)だ。
このアルバムまでに、セルフカバーアルバムと、ビーチボーイズ時代に未発表となった幻のアルバム「SMiLE」の共同製作者であるヴァン・ダイク・パークスとの共作「オレンジ・クレイト・アート」があるが、ブライアンにしてはどちらも少しテイストが異なるので、コアなファンにのみでOKだろう。
さらに実は「Sweet Insanity」(スウィート・インサニティー)というアルバムがお蔵入りしてしまっていて、こちらは最高傑作かというぐらい素晴らしいアルバムだったので(海賊盤が出回っている)、いつの日か正式に発表されることを祈るばかりである。
こちらも1曲目「Your Imagination」からして、幸せ感あふれる素敵な楽曲だ。
ブライアンの声も絶好調で、ビーチボーイズ時代のような透き通る声とまではいかないが、高音もしっかり出ていて、美しい楽曲にしっかり寄り添っている。
2曲目「She Says That She Needs Me」は、ビーチボーイズ時代の未発表曲「Sherry She Needs Me」のセルフリメイク。
ファンならビーチボーイズのバージョン(限定CD「Made In California」に収録)と聴き比べるのも面白いだろう。
そして5曲目「Keep An Eye On Summer」「Let Him Run Wild」も、ビーチボーイズ時代の楽曲のセルフカバー。
僕は「Keep An Eye On Summer」に関しては、このブライアンバージョンの方が、絶品のAOR作品に仕上がっていて魅力的だと思うのだけど。
そしてラストの曲「Happy Days」は、ファーストアルバム同様、ペット・サウンズ~スマイル期を思わせる楽曲。
だが、曲名どおりハッピーな曲なので、聴き終えてまた満足感に浸れる素敵なアルバムになっている。
That Lucky Old Sun(2008年)
さて、次は『That Lucky Old Sun』(ラッキー・オールド・サン)だ。
この作品までに、『Gettin’ In over My Head』そしてビーチボーイズの幻のアルバムを再現した『SMiLE』という話題作、それからクリスマスアルバム『What I Really Want for Christmas』が発表され、それぞれもちろん素晴らしいアルバムだが、この『That Lucky Old Sun』は、それらを凌ぐ出来と言ってもいいぐらい。
『Gettin’ In over My Head』には、幻のセカンド『Sweet Insanity』からのリメイク曲が数曲収められたり、ポール・マッカートニー、エルトン・ジョンとの共演曲があったりと、聴きどころが満載である。
『SMiLE』はビーチボーイズファンなら、もう言わずもがな。聴かないなんてあり得ない。
『What I Really Want for Christmas』は、ビーチボーイズ時代の名曲「Little Saint Nick」「The Man with All the Toys」のセルフカバーはもちろん、表題曲や「Chrismasey」といった新曲もメチャクチャ素晴らしい!
だがしかし・・・
よりブライアンらしいアルバムとなると、この『That Lucky Old Sun』なのである。
ブライアンのトラウマ「スマイル」にケリをつけたことや、上記の各種アルバム製作において、サポートメンバーであるダリアン・サハナジャやスコット・ベネットといったメンバーへの信頼がより強くなったのだろう。
ブライアンのやる気がみなぎり、サポートメンバーも実にイキイキ演奏(ヴォーカルにも参加)している感じが伝わってくる。
曲間をあえて空けずにつなげるという勢いある展開で聴かせる、泣けるほどにポップで、かつちょっぴり切ないブライアンワールド全開のアルバムに仕上がっている。
表題曲「That Lucky Old Sun」~「Morning Beat」そして「Good Kind of Love」「Forever She’ll Be My Surfer Girl」と名曲がこれでもか!と畳みかける。
これだ!これがブライアンだ!!
と、思わず叫びたくなるぐらい素晴らしい。
曲名もビーチボーイズ時代を思わせる「Surfer Girl」「Sun」「California」といった単語揃いで、スマイル期の曲「Can’t Wait Too Long」のカバーも収録。
完全に過去のトラウマを払拭し、キラキラしたポップ感が最高に気持ちいい!!
『That Lucky Old Sun』聴いていなければ絶対に聴いてほしい。
No Pier Pressure(2015年)
ベスト盤やコンピレーションアルバムを除いて最新作が『No Pier Plessure』(ノー・ピア・プレッシャー)。
こちらも実に素晴らしい。
本家ビーチボーイズからアル・ジャーディンとデヴィット・マークスが参加しており、ビーチボーイズ色たっぷりのアルバムだ。
ビーチボーイズ50周年を機に、奇跡のリユニオンが叶い、アルバム『God Made The Radio』(神の造りしラジオ)を発表した影響が色濃く出ている。
思わず「続編?」と言ってしまいたくなるような肌触り。
このアルバム発表の前には『Reimagines Gershwin』と『In the Key of Disney』が出ており、もちろんそれらも素晴らしい出来。
ブライアンのソロ作品にハズレなしなのだ。
『Reimagines Gershwin』は、ガーシュウィンの作品を、『In the Key of Disney』は、ディズニーの映画挿入歌などを、それぞれブライアンが脚色した作品である。
どちらも元々ブライアンの曲かと思うほどの仕上がりで、前者はポップながら、「The Like In I Love You」や「’s Wonderful」など、少しジャジーな感じがオーディオ的に実に気持ちいいし、ちょっとスマイル期に通ずる音作りも感じられて、さすがブライアンと唸らされる。
後者も、ディズニーのポップな曲が実にブライアンにぴったり。
「トイ・ストーリー」等でおなじみの曲がブライアンの手で新たな感触で楽しめるので、実に新鮮なのだが、マッチしすぎていて、本当にブライアンの曲かと思うほどだ。
まとめ~映像作品スマイルやラブ&マーシーも
というわけで、ブライアンのソロ作品は完全に「ハズレなし」なので、どれを聴いてもレベルは高いのだが、もしまだ聴いていないなら、上記を参考にオススメからまずは聴いてみてほしい。
ビーチボーイズが好きなら、ブライアンのソロも気に入ることだろう。
ビーチボーイズじゃないから、と言って敬遠していたら勿体ないぐらい、素晴らしい楽曲揃いなので、ぜひ無くなる前にブライアンのアルバムを手に取ってほしい。
良質な楽曲が日々のワクワクをきっと取り戻してくれるハズだ。
ブライアンにより興味を持った方は、映像作品もいくつか出ている。
ブライアンの半生を映像化した『ラブ&マーシー 終わらないメロディ』は素晴らしい映画作品だ。
スマイルの映像盤も出ているので、併せて見ることで、ブライアンの半生がより理解でき、ブライアンの音楽への理解度も深まることだろう。
どちらもファンなら涙なしには見られない。
さぁ、今日もエバーグリーンな楽曲を求めて。