ザ・ビートルズのほとんどのヒット曲はジョン・レノンとポール・マッカートニーの作品でしょ?
と思っている方は多いようです。
ども、人生にゆとりと幸福を創るFPゆとらです。
もちろん間違いではないんですが、もう一人の偉大なソングライターを忘れていませんか?
そう、遅れてきた才能「ジョージ・ハリスン(George Harrison)」その人です。
ジョージ・ハリスンと言えば、ビートルズ好きの間では「Something」(サムシング)や「Here Comes The Sun」「Taxman」あたりをイメージする人が多いと思います。
ですが、意外とビートルズ解散後のジョージのソロ曲を聴いたことがない、という人が多いように思います。
いやいや…勿体ないよ、というか、すごいんだ!むしろジョージ・ハリスンはソロが。
音楽数珠つなぎ、今日はザ・ビートルズのギタリスト「ジョージ・ハリスン」に焦点を当て、実質的初ソロ作品「All Things Must Pass」(オール・シングス・マスト・パス)が50周年を迎えることを記念して、ザ・ビートルズ解散後のジョージについてご紹介します。
忙しくてなかなかゆっくり音楽を聴く時間がない方も多いと思いますので、エバーグリーンな音楽だけをお伝えするように心がけています。
ザ・ビートルズ解散後、ソロ作品で最初のNo.1はジョージ・ハリスン!
ザ・ビートルズの解散後、ジョン・ポール・ジョージ・リンゴは、それぞれソロ活動を開始します。
それぞれのソロ活動は、ザ・ビートルズ解散後すぐに開始され、ジョンは『ジョンの魂』、ポールは『McCartney』、リンゴは『Sentimental Journey』をそれぞれ発表。
ビートルズ解散後、ソロ作品で最初にNo.1になるのは、ジョンかポールと誰もが思っていた中、なんとジョージ・ハリスンの大作3枚組LP『All Things Must Pass』(オール・シングス・マスト・パス)でした。
ジョージの才能爆発!『All Things Must Pass』の衝撃!
1970年11月にリリースされた『All Things Must Pass』(オール・シングス・マスト・パス)は、当時3枚組LPレコード(つまり値段も高い!)という大作にもかかわらず、全米・全英とも1位を獲得しています。
プロデュースはジョージ・ハリスンとフィル・スペクター。
アルバムのオープニングナンバー「I’d Have You Anytime」はボブ・ディランとの共作で、Quiet Beatle(静かなビートル)と呼ばれたジョージらしい渋い一曲ですが、このアルバムが並みのアルバムではないことを静かに告げる素晴らしいオープニングとなっています。
この曲を聴いて「おっ…なんか期待できそうなアルバムだな。」としみじみ感じることができるのです。スライドギターが何とも味わい深さを出しています。
そしてこの静かなオープニングから一気に、当時の「ザ・ビートルズ」での鬱憤から解放されたジョージの気持ちを表すかのような爽やかな「My Sweet Lord」(マイ・スィート・ロード)が流れてきて、さっそく2曲目にして興奮がマックスに達します!!
鳥肌ゾワゾワゾワッ!!
この「My Sweet Lord」を聞いたときの衝撃と言ったら「!!!!!」ぐらいでは足りません!
この曲とアルバムを、かつてのビートルズプロデューサーであるジョージ・マーティンは
信じられないほど、素晴らしい!
と表現しています。僕もまったくもって同感で、これほど的確にこの曲、このアルバムを言い表した言葉を僕は知りません。
当時、このアルバムを聞いた多くのファンも同じ心境だったでしょう。
ジョージのソロ作品だと気を抜いて聞いていると、僕と同じくこの1~2曲目でいきなりノックアウト寸前まで追い込まれますよ!
「My Sweet Lord」は、超を何個も付けたくなる位すばらしい名曲です!!
この曲が入っている、というだけでもこの『All Things Must Pass』を買う価値がある、と言えるほどです。
ジョージにしか作れない独特の雰囲気に溢れた超名曲が、一気にジョージを超一流ソロアーティストにしました。
ジョージのやや大人びた少しハスキーなヴォーカルもまさに絶好調で、色気すら感じるほどです。
もちろん 「My Sweet Lord」 は、シングル・カットされ全米・全英1位をそれぞれ4週・5週と特大メガヒットとなっています。
つづく「Wah-Wah」も、一息つくどころか、これでもか!とアルバムの流れをさらに勢いづかせます。
やっと一息かと思いきや、またもや名曲「Isn’t It A Pity」で、このアルバムの素晴らしさを嫌というほど知らされます。
ザ・ビートルズの実質的ラストアルバム『Abbey Road』(アビー・ロード)に収録されたジョージの作品(サムシング、ヒア・カムズ・ザ・サン)を聴いてもわかるように、この頃にはジョージは【レノン=マッカートニー】に優るとも劣らない優れたソングライターに成長していたのです。
セカンド・シングルとして発表されチャート10位となった「What Is Life」(美しき人生)が続き、ようやく「If Not For You」あたりで少し一息つける感じとなります。
その後もジョージらしい水準の高い曲が続き、やっと1枚目終了。
エリック・クラプトンやバッドフィンガー、リンゴ・スター、ビリー・プレストンなどがレコーディングに参加しており、「My Sweet Lord」ほどのインパクトはありませんが、アルバム2枚目も水準は変わりません。
このアルバムは、曲順も緩急をうまく付けており、最後まで「聴かせる」アルバム構成となっています。
3枚目では(CDでは2枚目最後)ジャム5曲が収録され、(このジャムがまた素晴らしい!)いかにもジョージらしい一筋縄ではいかない作品として、あっけに取られたまま幕を閉じ、何とも言えない余韻を残します。
本当に…ちょっと信じがたいほど素晴らしいアルバムをジョージ・ハリスンが作ってくれました。。。
もし仮に1枚のアルバムだったとしても、というか、1枚のアルバムだったなら、それはそれで逆に(価格設定的に)もっとヒットしていたかもしれません。
ちなみに、このアルバムに収録されている「All Things Must Pass」「Isn’t It A Pity」「Let It Down」あたりは、ザ・ビートルズのゲットバックセッションでも聴くことができます。
もしビートルズが解散していなければ、ザ・ビートルズの曲として発表していた可能性もあり、どのようなアレンジになっていたか想像するのも楽しいですね。
今から『All Things Must Pass』を聴くなら、50周年のリミックス盤2CD、もしくは、ファンなら未発表アウトテイク収録の3CDデラックス・エディションもいいですよ。ビートルズの「Get Back」ジョージバージョンを聞くことができます。
フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンド的な音もいいけど、過剰すぎる装飾を程よくカットし、ジョージらしいシンプルで無駄のないミックスが50周年記念盤『All Things Must Pass』の特徴。
ジョージ・ハリスン~ソロ作品のおすすめ
バングラデシュ・コンサート
その後、ジョージはロック界初とされるチャリティーコンサート「バングラデシュ・コンサート」を開催し、大成功を収めます。
その様子を収めたライヴ盤はもちろん名盤とされています。
ジョージソロ作品と言えるかは微妙ですが、ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、バッドフィンガーのファンの方も未聴ならぜひ、と言いたいところです。
ただ、ほぼDVD(映像)含め廃盤に等しい扱いなので、気になるなら入手困難になる前に手に入れておいてください。
Living In The Material World(リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド)
そしてその勢いそのままに、ジョージは実質的なセカンド・アルバム 『Living In The Material World』 を1973年6月に発表しました。
またもや全米1位を5週連続で獲得(全英2位)していて、この時期のジョージの充実ぶりを示しています。
こちらも非常に良い曲の並んだ傑作です。
オープニング曲「Give Me Love(Give Me Peace On Earth)」は、いかにもジョージらしいスタイドギターが効果的なシンプルかつ美しい楽曲で、やはりシングルとしてNo.1となっています。
こういった曲をかかせたら本当にジョージはうまい!
「Sue Me, Sue You Blues」も聴かせる曲だし、その次の「The Light That Has Lighted The World」は、アルバム『All Things Must Pass』に入っていてもおかしくないほどの美しいバラード。
「Don’t Let Me Wait Too Long」といったキャッチーな佳曲や、「The Lord Loves The One (That Loves The Lord)」「Try Some Buy Some」といったビートリーな(ビートルズっぽい)楽曲など、その後もレベルの高い楽曲が並び、 『Living In The Material World』 はジョージのソロ作品の中でも高水準なアルバムの一枚と評価されています。
今から聴くなら「バングラデシュ」がボーナストラックで収録された『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド+3』が、高音質MQA-CD(ハイレゾCD)となっており決定版となりますが、残念ながら廃盤のようです。
そしてこの後、ジョージは「My Sweet Lord」が盗作として訴えられたり、パティとの別れや、声帯を弱らせた状態で出たツアーが酷評されたり、とパッとしない時期が続くこととなります。
ジョン・レノンも観客席に訪れた全米ツアー終了前に発表となった『Dark Horse』(ダーク・ホース)以降も、必ずアルバム中に素敵な曲が収録はされていたものの、全体として成績不振なアルバムが続くこととなります。
とは言え、ジョージらしい落ち着いた作品は、周辺が最悪の時期に発表され評価があまり高くない『Extra Texture』(ジョージ・ハリスン帝国)でも、「This Guiter(Can’t Keep From Crying)」など佳曲の収録やAOR的な風合いもあり、ファンなら愛聴盤となるのが、ジョージらしいと言えばジョージらしいかもしれませんね(笑)。
33 1/3
EMIとの契約が終わり、自身のダークホースレーベルから『33 1/3』『George Harrison』(慈愛の輝き)を発表、それぞれ全米11位、14位と健闘しています。
僕個人的にはあまり目立たないアルバムである『33 1/3』が結構好きだったりします。
ソリッドなベース音から始まる「Woman Don’t You Cry For Me」が実にシブい!ファンクなんです。
つづく「Beautiful Girl」はジョージらしいマイナー調なのに、少し明るい響きで「あぁ~やっぱジョージいいよなぁ」としみじみ思い、「This Song」はややわかりやすすぎるけどイイ曲ですし、「True Love」はジョージらしいスライドギターも満喫できる実にメロディが素敵な曲です。
「Learning How To Love You」はAORの香り漂う大人の味わい。
アルバム全体の音は柔らかくもソリッドで、目立った曲はないものの、『33 1/3』実に味わい深いおすすめアルバムですよ。
George Harrison ( 慈愛の輝き )
ちなみに再評価が進んだ今では 『George Harrison』(慈愛の輝き) は、 『All Things Must Pass』 『Living In The Material World』 と並ぶ傑作とされているアルバムです。
アルバムトップを飾る「Love Comes To Everyone」がなんとも素晴らしい!
久々にジョージの本領発揮!といわんばかりの、しみじみ系キャッチーな名曲で少しAOR的でもあります。
ギターで参加のエリック・クラプトンが、自身の作品でもカバーするほどの名曲です。
ビートルズ時代の「Not Guilty」をはさんで、「Here Comes The Moon」。
あれ?そうです。この曲はビートルズ時代の名曲「Here Comes The Sun」の続編です。
「Blow Away」はビートリーなナンバーで、従来のファンもニヤリ。
アコースティックギターが美しい「Dark Sweet Lady」、そしてジョージ本人もお気に入りの「Your Love Is Forever」は、妻となるオリヴィアへ捧げる愛の歌で、実にメロディと響きが美しいナンバー。
アルバム全体として高水準の曲が続く好盤なので、ジョージソロ作の中でもぜひ聞いておいてほしい一枚が『George Harrison』(慈愛の輝き)です。
その後ジョージは、ジョン・レノン射殺事件が起こったことをキッカケに、ジョン以外の元ビートルズの3人がコーラスに参加した「All Those Years Ago」(過ぎ去りし日々)で全米2位を記録し、久々にヒットチャートを賑わしました。
ですが「All Those Years Ago」を収録したアルバム『Somewhere In England』(想いは果てなく〜母なるイングランド)は、さほど高い評価は得られず、ジョージのソロ作で初めてゴールド・ディスクを逃してしまうことになりました。
シングルカットされた「Teardrops」などキャッチーな曲もありますが、ジョージらしからぬその時代の音もあり、全体的にはやはりパッとしないのも確かですね。
個人的にはアルバムラストを飾る「Save The World」がジョージらしくて好きなんですけどね。。。
その後、チャートとしては最低を記録する『Gone Troppo』(ゴーン・トロッポ)をはさみ、次のヒットはジェフ・リンがプロデュースした『Cloud Nine』(クラウド・ナイン)まで長い間待たねばなりません。
Cloud Nine(クラウド・ナイン)
1987年に発表された『Cloud Nine』 は全米8位となり、日本ではジョージのアルバムの中で最も売れたアルバムとなっている。
E.L.Oのジェフ・リンがプロデュースしているだけあって、音的に影響が大きく、全体の音の感触やコーラスがジェフ・リンというかE.L.O風を感じます。
ジェフ・リンがビートルズ好きということもあり、楽曲をうまくアレンジし仕上げている感触で、「This Is Love」「Devil’s Radio」なんかが顕著ですが、ポップな感触が本作では良い方に出ています。
「When We Was Fab」は、ビートルズ時代(マジカルミステリーツアーあたり)を彷彿とさせる曲で、ビートルズファン必聴です。
「Someplace Else」はジョージらしさとジェフ流がうまくミックスされた実に味わい深く素晴らしい曲。
これを待っていたのだよ!ジョージ!!
そして「Got My Mind Set On You」は全米1位、全英2位の大ヒットを記録。
久々にジョージがメインストリームに返り咲いた瞬間でした。
個人的にはあまりジョージらしい曲ではないので、微妙な感じもするんですが(笑)、ポップでキャッチーな感じが時代には合っていたような気がしますね。
この曲のヒットで、ジョージは「世界一長い間ヒットを飛ばし続けた男」としてギネスブックに認定!!
改めて偉大なり、ジョージ・ハリスン!
LIVE IN JAPAN(ライヴ・イン・ジャパン)
ジョージ唯一のライヴ・アルバムが「LIVE IN JAPAN」(ライヴ・イン・ジャパン)です。
このライヴ・アルバムだけなぜか【SACD】(スーパー・オーディオ・CD)フォーマットでも発売されています。
ビートルズ時代の曲など織り交ぜながら、もちろん「My Sweet Lord」や「Give Me Love (Give Me Peace On Earth)」も収録されていて、なかなかの充実ぶりです。
以前のライヴ・ツアーが酷評されていたこともあり、エリック・クラプトンの進言により日本でのライヴが行われ、おおむね好評のままライヴを終えました。
そのライヴが音源なんて、僕ら日本人にとってはうれしい限りですね。
チャート上はまったくヒットしていないものの、脇を固めるのはクラプトンなど鉄壁のメンバーで、貴重なジョージのライヴ盤となります。
Brainwashed(ブレインウォッシュド)
なお遺作となる『Brainwashed』(ブレインウォッシュド)も、ジョージらしい秀逸な作品です。
ジョージの残した音源を、息子でありギタリストでもあるダーニ・ハリスンとジェフ・リンが仕上げた傑作で、ジョージらしいしみじみと良さが沸き上がる、きっと気に入るアルバムです。
グラミー賞にもノミネートされ聴きごたえたっぷりです。
まとめ~遅れてきた才能ジョージ・ハリスン
ね?意外と後追い世代の僕らって、ジョージ・ハリスンのこと、何も知らなかったんじゃないでしょうか?
まさかギネスに認定されていたなんて(笑)。
ビートルズというと、何かとジョン・ポールに目が行きがちなところですが、ジョージも音楽的には何とも味わい深くて素敵な魅力があるんです。
ジョージ・ハリスンのソロ作品を「まだ聴いたことがない」のなら、まずは傑作・名盤とされているアルバムから聴いてみるのはどうでしょうか?
断然、最初は『All Things Must Pass』からがオススメです。
最近のチャカチャカしたヒット曲ばかり聴きなれた耳には、やや優しすぎるかもしれませんが、逆にすごく優しく聴きごたえがあって、新鮮かもしれませんよ。
ジョージはヒットチャートには無関心でした。ヒットすることと良い曲であることは別なんですよね、当たり前ですが。
「信じられないぐらいに、素晴らしい!」と思わず漏らしたジョージ・マーティンの言葉を信じて、ビートルズファンの方はぜひ聴いてみてください。
きっと、ジョージ・ハリスンの優しい音楽に癒される方が多いと思います。
忙しい現代のような時代にこそ、ジョージ・ハリスンのような音楽が必要だと僕は感じます。
ジョージ・ハリスンよ、永遠に。