シン・エヴァンゲリオン劇場版を見て「あ、そうなのか」と思ったこと

ども、人生のゆとり探求家ゆとらです。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ご覧になられただろうか?

「え?これってどういうメッセージなの?」と改めて思う人や、「なるほど~、旧劇場版と言ってることは同じやん」と感じた人など、さまざまな考察がSNS上で繰り広げられている。

総監督である庵野秀明氏の頭の中にしか100%のアンサーはないが、各個人が「自分なりの答えを見つけたい」と思える素晴らしい作品であることに違いはない。

色んな解釈ができる「エヴァンゲリオン」において、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が完結編ということもあって、観終わって「あ、そうだったんだ」と気づいた点がかなりあったので、僕なりの解釈を記しておきたい。

もちろん個人的な解釈であり考察であることをご了承いただきたいが、「ほぅ!?」という発見、気づきがあれば嬉しいし、「なるほどね。そのように考えることもできるよね。」と温かい目で見ていただければ幸いだ。

目次

エヴァは庵野秀明氏の成長物語

総監督の庵野氏は、主人公である碇シンジを含め、さまざまなキャラに自身の考えや感情を映し出してきた。

「もっと僕を認めてくれたっていいじゃないか!」

「僕なんて必要ないんだ。」

きっと多くの人が感じたことがあるであろう孤独、寂しさ、不安・・・。

こういった感情を庵野氏自身、今も持っており、つまるところは

「人生ってなんだろう?」

「生きるって何だろう?」

と。

今も昔も答えの出ない根源的な「問い」。

『エヴァンゲリオン』の中にはそういった「問い」が無数に散りばめられており、僕らの胸をギュギュっとえぐってくる。

さらには世の真理を知っているかもしれない(?)フリーメイソンを思わせる主人公の名前(父ゲンドウの旧姓:六分儀ではなく、わざわざ母であるユイの姓を使っていることも含む)や「知恵の実」「生命の樹」「死海文書」「使徒(エンジェル)」など聖書を連想させる宗教的なメッセージ。

「始まりと終わりは同じ」

「破壊と再生」

「破滅と希望」

「生命の弱さと強さ」

「死にたい」「生きたい」

「夢と現実」

いずれも表裏一体、世の理(ことわり)をあらわすかのような表現。

「セカンドインパクト」「サードインパクト」から連想される、滅びの時を人類は何度か迎えている・・・その可能性があることは、ノアの洪水等の伝説からも想像がつく。

堂々巡りのように頭の中を行きかう思考も結局はこれらと同じかもしれないし、「すべてはひとつである(ワンネス)」「神」というスピリチュアルな視点にもたどり着く。

世の中はシンプルであり複雑。

そしてすべては繰り返され、始まりと終わりは同じである。

これは世の真理かもしれない。

だからエヴァを観るもの・考えるものを意識的にも無意識的にも共感させてきた。

で『シン・エヴァンゲリオン劇場版』での結末はどうだったか?

これは多くの考察にあるように『THE END OF EVANGELION Air/まごころを君に』(以下『旧劇』)と大きくは同じであったように思う。

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シンジは神のような存在となり、感情の痛みのない世界(ひとつになる世界=還る)を実現しかかるが、やはり苦痛や寂しさがあるとしても、「日常(現実)」(みんながいる世界)を選択する。

『旧劇』においては、碇ユイが「もう、いいのね?」というシーンも同様の表現である。

自分がもし「神」になれるとしたら・・・世界をつくれるとしたら・・・

これは「人生って何だろう?」という「問い」の答えに等しい。

それでも「ひとつ(苦など感情のない世界)」に回帰せずに、「個々の世界(ATフィールドや心の壁のある世界)」を選ぶのか。

「エヴァ」という作品が、それに対する庵野氏の(現時点での)答えであり、ひょっとすると僕らの知らない真実の歴史の物語であるのかもしれない。

これは「神による世界の創造・破壊」という極めてスピリチュアルな始まり・終わりを表現しているものだ、と感じる。

同時に、人間個人個人の内宇宙を表現しているとも思える。

そして『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で明らかになったことは、シンジは日常に「戻る」とか「やり直す」のではなく、「新たに創る」ことを選択したということ。

これが『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のひとつのポイントだと思っている。

それこそが「新世紀」なのだ、と。

「不合理で大変な苦痛や悲しみを伴う世界で、誰も悲しまない世界(原始)に還りたくなるけど、不合理ゆえに自分の想像をはるかに超える素敵な出来事も起こりうる。だから生きて、自分で新しい世界を創ろうよ」という極めてポジティブなメッセージ。

『旧劇』でも「現実に帰れ」というのは、ネガティブなメッセージには僕は受け取らなかったのだけど。

『旧劇』では、そのような選択をしたシンジが、自分を罵った記憶のあるアスカの首を再度しめて、でもアスカが手を差し伸べ、首を絞めるのをやめる。またはそんな自分に嫌気がさす。

そして、アスカが「気持ち悪い」と言ったところが終わり(=新たな始まり)だった。(アスカの目に包帯があるのは、レイの初登場シーンの姿と被ることで、終わりと始まりは同じということがよく考察される。)

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この『旧劇』のエンディングは「極めて不合理な世界」の矛盾感を表現した皮肉や、安易な表現へのアンチテーゼのようなものとは思うが、そのようなトガった表現を「ひねくれてるかも」とか「幼稚かもしれない」と捉える(ある意味で、やや大人になった)庵野氏の心境の変化が、今回の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』での表現になった可能性はある。

もしくは『旧劇』のわかりにくさや批判(世論)に対して、わかりやすい決着をつけたかったのかもしれない。

結果として『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のエンディングをハッピーエンドと捉え、賛同している意見が多いように思う。

僕としては、どちらも素晴らしい出来、という思いだ。

『旧劇』には『旧劇』の良さがあり、これもひとつの終わりをキチンと描いている。

もしまだ『旧劇』を観ていないという方は、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観てからでも『旧劇』をご覧になられてはどうかと思う。

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ただし、『新劇』のようなハッピー感は感じられないかもしれないので注意。

逆に単なるハッピーエンドに深みを感じられない方にとっては『旧劇』の方が「傑作だ」となる。

マリ=庵野モヨコ説

ところで、新劇場版の新キャラと言えば「真希波・マリ・イラストリアス」である。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では、シンジが最後マリとくっつく日常が描かれている。

そこに「?」を感じる視聴者もいたようだが、僕は「あ、なるほどな」と思った。

マリは「庵野モヨコ」、つまり庵野秀明氏の奥さんを投影したキャラだったのだ、と。

NHK「プロフェッショナル」をご覧になられた方はお気づきかと思うが、子どものようでかつ不器用で「誰が面倒見れるのか?」という庵野氏を妻として支えるのが、(精神的に大人な)マリ=モヨコさんなのだ。

エヴァの設定上マリは、シンジ・レイ・アスカより、やや年上(16歳)であり、これは精神年齢が上という比喩表現ではないだろうか。(貞本版エヴァ14巻(漫画最終巻)追加エピソード「夏色のエデン」参照・・・この頃から伏線は張られていたのね。。。)

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マリは作品の中において、シンジをニオイで「いい匂い(LCLのニオイ)」とか「少し大人になったニオイ」と表現している。

アスカがシンジの態度を見て「ガキね…」と言っているのに対して、マリは態度や見た目ではなく「ニオイ」で判断するあたりが直感的で、自分でどのように思っているかはわからないが、僕は庵野氏の「ピュアさ(言い換えると子供っぽさ)」や「本質を掴むこと」を表しているようにも思えた。

そしておそらくマリは、その純粋さと、少し大人になった(でも子どものような)シンジを包み込んでくれる陽気なお姉さん的憧れの存在であり、暗くネガティブなシンジはそのようなマリと対峙できるほどに大人になった、ということである。

やはり庵野氏の成長物語なのだなぁ、と。

最後の庵野氏の故郷であり、実在する「山口県宇部市」が実写で映し出されるのも、そのあたりを想起させるのに十分だ。

僕が受け止めたメッセージ。それは・・・

マリ(=飛び級で大学に進学できるような才女で、かつ飛び切りの美女。かつ男女両性とも受け入れる寛大さを持つ人間)のような女性に出会って、そのような相手がちっぽけと思っていた自分の存在をちゃんと見てくれて、迎えに来てくれる(一緒になることもある)、なので傷つくばかりではない希望の光がある世界、なんていう不条理!なんという矛盾!

なんて世界なんだ!!!

このような合理性がなく何が起こるかわからない世界こそが日常であり、自分(=神)が望んだ世界なんだ、と。

そしてそのような女性であるモヨコさんに、エヴァンゲリオンという作品で、シャイな庵野氏が出会ったことや伴侶になってくれたことへのお礼の表現を忍ばせたのかもしれないし、視聴者にも「どんなことでも起こりうる」「希望を捨てなければいいことがあるかもしれない」「希望を持て」というメッセージになっているのではないかと思う。

昔より心の奥は少し癒されたのかなと想像する。良かったね、庵野監督。

『エヴァの呪縛』にかかっているのはアナタ

『エヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(以下『Q』)で明らかになった「エヴァの呪縛」

エヴァに乗ったパイロットは見た目の年齢が止まってしまうというものだが、これは「ヒトでなくなってしまう!」という赤木リツコの言葉からも「ヒト(リリン)ならざるモノ」(=神のような永遠の存在)になったことを表しているというのは、よくある考察。

だから見た目トシを取らない、と。

で、これもたまに見かける解釈だが「エヴァの呪縛にかかっているのはアナタである」という。

ひねくれものの庵野氏のことなので、正にこのようなメッセージを込めていると僕は考える。

つまり「エヴァンゲリオンという作品を初めて見たぐらいの時から、あなた(や僕や庵野氏自身)は実質(精神)年齢が変わっていないんじゃないか」。

もっと言うと「人はいつまでも(根本的には)10代ぐらいのままである(=変わらない。でも成長していくのだ。)」というメッセージかと。

これは碇シンジに自分を投影した庵野氏自身が感じていることを表現したと思えてならない。

事実、僕自身が10代の頃と大して変わっていない(根本的には大きく変わっていない)ように感じられてならない。

もちろん、大人になるにつれて様々なことを覚え、体験し、成長したとは思ってはいるが、根本的な「寂しさ」に対して感じるものや「感覚」などは多感な10代から大きく変わっていないのではないか。

なのに「常識」や「大人の論理」で展開していく極めて不合理で不条理な世の中。

そんな世の中に生きていくのだから傷つき、苦しみ、生きるのが辛いと感じる。

でも、そこに希望の光もある。でもやっぱりつらいよ。何なんだよ!

僕はここにいなくてもいいんじゃないか。耐えがたい存在の軽さ…消えてしまいたい。

でもそれはやっぱり自分が望んだ世界・・・(以下、繰り返し=始まりと終わりは同じ。)

このような感情の機微を、どんな作品よりも狂おしく表現した作品が「新世紀エヴァンゲリオン」であったのだ。

だから、泣けるんだ。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を見て、まとめ

「あ、そうなのか」とハッキリ腑に落ちた部分もあれば、まだまだ謎が残っているようなモヤモヤ感があるような気もする。

そのモヤモヤこそが僕らの「エヴァ」の魅力であり、現実の世界なのだと思う。

僕は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を心から待ちわびていた、というほどマニアックなファンではないし、そればかりに頭を占拠させるほど日々暇ではなかった。

だが映画が公開されると、何かの衝動に突き動かされ、いつの間にか映画館に足を運んでいた。

そして『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の終盤に差し掛かるところで、自然と涙が溢れていた。

なぜだかわからない。

でも、たぶん・・・

この辛くも美しい世の中と自分という存在に対する様々な感情が、心の奥底から溢れ出してきて、思考が追い付かない部分の『何か』が激しく揺さぶられたのだと思う。

ちなみに『旧劇』の時も似たような感じだったが、時が経っている分、そして自分がこの世の中でそれだけ長い時間過ごしてきている分、『新劇』の方が「何か」が動かされた感があった。

エヴァの完結という事実が感傷的にさせた部分も、もちろん否定できない。

もうこんな映画は二度と出ないであろう。少なくとも僕の中では。

生きていくことの大変さ、世の不条理さ、でもそのなかにある希望の光・・・

その中で、何かモヤモヤし、もがくように生きている人ほど『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は心に響くのではないかと思う。

心を揺さぶられよう。

こころが動く、というのは貴重な体験だ。さらに心が「豊か」になった証拠なのだ。

そして現実を見つめなおし、少しだけ前へ進もう。

僕が毎日に「ゆとりを」と言うのも、同じような毎日のなかで「ワクワク」を探そう、大変な世の中だからこそ「ゆとりを持とう」と言うのも、広い意味では『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と同じポジティブなメッセージだと思っている。

さらば、すべてのエヴァンゲリオン。

感動を、ありがとう。

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